信頼できる先生やパートナーとよく相談して、自分にあった治療法を選択しましょう。
排卵と受精を補助する治療法には、タイミング法、排卵誘発法、人工授精、体外受精などの生殖補助医療があり、順番にステップアップして行われます。
◎不妊の治療法
・タイミング法
タイミング法とは基礎体温などにより排卵日を予想し、排卵のタイミングにあわせて性行為を行う方法をいいます。
排卵日の約2日前から排卵日までに性交渉があると妊娠しやすいと言われていて、排卵日を診断して性交渉のタイミングを合わせていきます。
病院では排卵予定日数日前の頚管粘液(おりもの)をチェックしたり、卵胞の大きさなどをみてタイミングを指導します。
卵胞の直径が20ミリくらいになると排卵するといわれているため、これを元に排卵日を推定します。
病院からのタイミング指導ではなく、自分で基礎体温や排卵日検査薬などで、タイミングを合わせる方もたくさんいますが、
やはり粘液(おりもの)の状態や卵胞の大きさ、血中のホルモン値など総合的に病院で診てもらうことをおすすめします。
薬物や外科的手段を用いないので、母体への負担も金銭的負担も少なくてすみます。
・排卵誘発法
黄体機能不全や卵管の状態などにより、排卵が起こらなかったり排卵の状態がよくない場合、排卵誘発法を使うことがあります。
排卵誘発法は飲み薬と注射があり、飲み薬はクロミッドと呼ばれる錠剤が主流になります。
初めて排卵誘発する場合は、飲み薬から始める場合が多いようです。
生理5日目から5日間程度服用します。
注射の場合は、クロミッドよりも強い薬が多く、生理5〜7日目頃から一日おきくらいにhmg(卵胞を大きくする注射)を打ち、
その後排卵を促すhcgを打つのが一般的ですが、hcgのみの場合もありますし治療方法は人によって違います。
まれに卵巣が腫れたり(OHSS)三つ子や四つ子など多胎妊娠がおこることがあります。
○人工授精(AIH)
人工授精とは排卵日にあわせて精子を採取し、成熟精子だけを洗浄・回収して、人工的に細いチューブで子宮の中へ精子をおくる方法をいいます。
タイミング法で妊娠にいたらない場合のステップアップにAIHをされる方が多いです。
頚管粘液(おりもの)の状態がよくなく、精子の運動率が低い場合や子宮内にうまく精子をとりこめない方など有効です。
タイミングと同じく、きちんと排卵日を予測し精子を注入しないと効果はありません。
妊娠する確率は10%程度です。
精子をおくるときに、運動率のいい精子だけを集め濃縮させ洗浄するバーコール法が主流になります。
痛みも少なく費用もあまりかかりませんが、回数を重ねる度に妊娠の確率は低下します。
その為10回以内を目安に次のステップ(体外授精)を考えましょう。
排卵誘発剤による治療法HMG、FSH、HCG、クロミフェンなどを服用または注射し排卵を促しますが、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)、多胎などの副作用があります。
○高度生殖医療(ART)
※ARTには、体外受精-胚移植、顕微授精、凍結胚移植などの治療が含まれています。
・体外受精-胚移植(IVF-ET)
AIH後のステップアップや、卵管機能がよくない場合や精子に問題がる場合に体外受精を行います。
体外受精は、採卵により排卵前に体内から取り出した卵子と精子の受精を体外で行う治療です。
卵子をいったんとりだして、精子およそ10万匹と卵子1個をかけあわせて、受精を待ち、受精した受精卵を子宮に戻します。
現在では、卵管障害以外の不妊症にも応用され、妊娠が難しかった精液所見不良、抗精子抗体陽性、機能性不妊、高齢女性や人工授精を何回施行しても妊娠に至らなかった人たちの妊娠率を高めています。
受精が正常に起こり細胞分裂を順調に繰り返して発育した良好胚を体内に移植すると妊娠率がより高くなることから、一般的には2〜5日間の体外培養後に可能な限り良好な胚を選んで腟の方から子宮内に胚移植します。
・顕微受精
顕微受精では、生理開始3日目から排卵誘発剤やホルモン剤を投与して排卵を促し、採卵によって顕微鏡で見ながら一匹の精子を1個の卵子につきさして授精させる方法です。
極端に精子の数が少ない・精子の運動率が低い方や、人工授精や体外受精で受精することが難しい場合、精子に透明帯を通過する能力がなかったり、
または卵子と融合する能力を持たない場合は、女性の体が精子を拒絶する抗精子抗体を持っていて、精子が体内に入れない場合でも、顕微授精であれば受精をサポートすることができます。
精液の所見だけではなく、何度か体外受精を試みても受精率が悪いといった場合にも適応となります。
妊娠率は平均で25%(年齢によって異なります)、医療費は保険がきかないため平均20万〜60万程度必要で、注射の種類や回数などによって金額は変わってきます。
一般的に、人工授精や体外受精で妊娠が成立しないとき、最終手段として顕微授精の実施を検討することになります。
〜体外受精の流れ〜
1. 排卵誘発
質のよい卵子を取り出すために、排卵誘発剤(飲み薬、点鼻薬、注射など)で卵巣を刺激して卵子を発育させます。
やり方は低刺激法、高刺激法など複数あり、個人に合わせて決定します。
薬の量や種類で費用も変わります。
2. 卵子、精子の採集
卵子が十分に発育したら、卵子を採る「採卵」をします。
採卵 → 経膣超音波で確認しながら、膣からカテテールを挿入して成熟した卵胞を吸引します。
麻酔を使用する場合もあります。終了後はしばらく休んでから帰宅します。
採精 → 採卵の当日クリニックの採精室にて精子を採集します。
または凍結保存精子を使います。
採卵を行い、いくつか良質な卵子が取れた場合でも、多胎妊娠などを避けるため、顕微授精には1つだけを使い、残りは凍結保存することもあります。
また、採卵のタイミングに合わせて、男性の体から精子を採る「採精」も行います。
3. 受精
体外受精での受精方法は、体外受精と顕微授精の2通りがあります。
◎体外受精
排卵当日に採取して洗浄・濃縮した精子と排卵した卵子をシャーレの中で合わせ、培養器に入れて受精を待ちます。
精子が自ら卵子に侵入することで受精が起こります。
◎顕微授精
採卵した卵子を培養液の中で確認し、採精した精子は運動性の高い精子のみを取り出し、顕微鏡下で細いガラス管を用いて、精子を卵子に注入し受精させるます。
精液所見が不良な男性不妊症や体外受精では受精卵を得られない場合に行います。
4.培養
体外受精・顕微授精で得られた受精卵は、子宮内に近い環境に整えられた培養器で培養されます。
5.分割
受精卵の分割スピードは、2日目には4分割、3日目には6から8分割と、分割を繰り返して成長します。
さらに、5日目で胚盤胞に到達した胚は着床率が高いと考えられています。
胚盤胞到達率は、初期胚全体の約50%とされていますが、3日目で8細胞期胚に到達した胚に限れば、その約70%が胚盤胞に達します。
胚盤胞移植あたりの妊娠率は分割期胚移植より高いと言われています。
4. 胚移植
受精卵が順調に分割したら再び子宮内に戻します。
原則1個の胚(多くても2個まで)を子宮内に移植し、余った胚は凍結保存することもあります。
胚移植にはいくつかの方法があり、胚の質や患者様のご希望・ご都合に合わせて選択します。
5. 妊娠判定
受精卵を移植してから約2週間後に妊娠しているかどうかを尿判定あるいは血液検査などで確認します。
妊娠している場合は、黄体ホルモン剤を続けて投与します。
※妊娠していなければ、再び月経周期に合わせて凍結保存した胚(受精卵)を移植します。